レザー装飾品の作家である施主のアトリエやギャラリーと母屋の二つの空間から成る住宅である。

アトリエと母屋を二つの箱に分け、ずらし、内部で『十字』型の廊下で二つの箱をつなげた。『十字』の交点上部にはトップライトがシンボル的に設けられ交点であることを可視化している。またこの廊下は居室への入口となるのはもちろん、廊下が広くなりガレージやギャラリーとなったり、一畳の茶室や玄関や収納、二階への階段などが取り付き、住人の活動の場となっている。『十字』の廊下が緩衝空間となり、アトリエでの作業音を和らげる効果を生み、また家族の気配を感じたり、トップライトの光を感じながら一息ついたりできる。

街には人々の喧騒や、車や電車などの音にあふれ、一方で一息つけるカフェやベンチがある。廊下は無駄な空間としてなるべく省くよう計画しがちであるが、家族の活動や振る舞いに寄り添うことで、あたかも街の露地が家の内部に入り込んできたような住宅となった。