マンションの専用区画のリノベーション。戸建てと異なりマンションは制約が多く設計の自由度は少ない、さらに今回は既存躯体が壁式コンクリート造のため間取りはほとんど変更ができないという条件があった。そのために建築的なコンセプトを掲げるのではなく、施主や設計者にとって居心地の良い空間は何かを議論しながら設計を開始した。結論としては明るく、子どもが元気に過ごせる家であった。

壁式構造の場合、どうしても壁の量が多く、空間が暗くなりがちである。
しかし壁のコンクリートに穴をあけることはできないため、使用する建材はすべて『白』を基調とすることとした。壁の左官や塗装はもちろん、フローリングやタイルに薄く白塗装、既存の梁にも白を混ぜたモルタルを重ね塗りし、自然光が部屋の隅々までいきわたるよう配慮している。また素材自体も左官やなぐり加工フローリングなど自然素材を用いつつ様々な素材を使い一見『白』に見える空間に変化や特徴を出している。また、玄関からリビングまで天井と壁の間に間接照明のスリットを設けたり、壁に大きめのニッチを設けたり等、小さなディテールの積み重ねもおこなっている。

各素材に薄く『白』化粧した仕上げとディテールの集積で空間にさりげなく奥行を感じさせようとした。
その結果、豪華な素材を用いているわけではないが、静かで豊かな居心地の良い空間を実現することができたと思う。