江ノ電藤沢駅近くのカフェ。藤沢市出身のオーナーが、『藤沢』を感じさせる空間を実現したいという思いをもとに、慣れ親しんだ海辺空間をモチーフにデザインを行った。

具体的には海岸沿いには濃紺の海があり、砂浜、そしてコンクリートの階段ベンチがある。
そのベンチは勾配が海に向かってついているため自然と前のめり姿勢となり海を眺めてしまう。店舗でも壁沿いにベンチを通し、若干の勾配をつけ自然とカウンターに立つオーナーと対話ができるしつらえとした。またベンチと正対した壁に青いタイルを張りベンチに座るとオーナーの背後に海が広がって見えるようにしている。
また、ベンチの背もたれは壁の下地であるスタッドをそのまま見せた上でサビ止め塗装を。そして真鍮の船舶照明を取り付け、造船や港といったキーワードを想起させると同時に、どこか港町のバーのようなクラシカルさも感じさせるような重層的な印象を持たせている。

店舗のある商店街はオーナーが小さい頃から日常的に使用する道に面し、また子供のころから親しんだ海辺空間をイメージした店内…新しい店舗ながらも、どこか懐かしく既にこの街に存在していたかのような佇まいとなった。